そばの仲間たち
そば畑周辺の『そばの仲間』たち
    
- 観察して見ましょう、蕎麦のルーツと親戚 -
 世界食文化図鑑(東洋書林・2003年1月22日発行)は、『そばは中国の東北地方(旧満州)原産で、紀元前1000ほど前に日本に広まった』と解説しています。このころ、中国は秦の始皇帝の時代で、水稲栽培が考案されています。
 当時、日本はまだ縄文時代晩期で、弥生時代への移行が始まるころです。稲作技術は、秦の始皇帝の命により不老不死の薬を探しに渡来した徐福によって日本にもたらされたとの伝説がありますが、そばはどんなルートで誰がもたらしたのでしょうか。

 さて、外来のそば、そばはタデ科ですが、その仲間の野草は身近に何種か見られます。ものごと感心を持つと、どんどん視野が開けて楽しくなります。
蕎麦の会がそばを耕作している八千代市小池・神久保・真木野地区の、ごく近い500m足らず周辺の農道沿いに6種ほど見られます。目につきながら誰にも『そばと仲間』なんて感心を持たれない野草で、中には手におえない雑草も含まれています。では、その野草を『そば』と見較べてみましょう。

   
そば(常陸秋ソバ)
 主に茨城県で栽培される、実が大粒のそば。私たち蕎麦の会でも栽培している普通ソバの改良種です。風に揉まれて倒伏しても短期に起き上がる、勢いのあるソバです。
 そば、無限花序(むげんかじょ)の習性で、花が実に変わっても上段から下段に次々花を咲かせ、ついには花が1〜2割ほど残っているうちに刈り取る(収穫)ことになります。
. ギシギシ
 この画像は、刈り込まれて再度成長した秋のギシギシで、まだトウが立っていません。畔に多く見られる勢力の強い野草です。スイバに似ていますが、葉の幅が広く、強いトウが直立します。
 トウに茶色い種子がびっしり付き、こぼれて繁殖します。勢いが強くて下草が生えず、根を掘り返さなければ根絶できないほどです。
. ミゾソバ
 水路など溝の周辺にひっそり花を咲かせています。小さいソバ様の葉から「あぁ、そばの仲間」と分かります。みずみずしい花で、掃き溜めに鶴です。先端がピンクの白い花に見えるのはガクで、この中に実を結びます。茎と葉は下向きのとげがざらついて清楚な花に似合わずいやらしいです。護身のために進化したのでしょうね。
ヤナギタデ
 ヤナギタデのスプラウトがお刺身の薬味につくことがあります。そう、あの双葉の茎が赤色した少々辛味の。
 雑草に混じって生えているヤナギタデの葉を噛んでみると、多少渋辛味があります。葉を観察すると、虫食いの穴があいていて「ははー、これが蓼食う虫も好き好きか」と納得。
. スイバ
 刈り込まれてもしぶとく成長するスイバ。あぜ道によく見られ、春の若く赤い茎は美味しそうに見えます。柔らかい茎を噛んでみると恐ろしくすっぱく、思い出すだけで唾液が出てきます。酸味はシュウ酸ですから、たくさん食べないこと。 ギシギシに似ていますが、葉もトウも細身で区別できます。
. オオイヌタデ
 藪という藪、どこにでも生えているような野草です。太い穂が垂れ下がり、茎から枝分かれして繁殖力の強さを窺わせます。見ると他の野草ともたれ合い、茎が細いにもかかわらず、丈が2mにも伸びます。葉は初秋にあざやかに紅葉しますが、すぐ茶色に変わって、野草や藪の中だけに、きれいと言うより朽ち果てる感じ。
.  イヌタデ
 淡いピンクが秋も深まると毒々しい色の穂に変わり、どこにでも目につきます。葉は細くヤナギタデに似ていますが辛味がありません。路傍や畔に生え、刈り込んでも生える野草です。
 この画像は、アスファルト道路とコンクリート壁の間の側溝に群生している様子で繁殖力の旺盛さを示しています。
    
- タデ科雑草の混生 -
 と、こんなふうにタデ科の仲間は逞しく生きています。実はこの仲間たちが以下のように混生しているところも見かけます。この場所は、同じく、全て八千代市小池・神久保・真木野地区です。
  
. ギシギシ・ミゾソバ・イヌタデの混生
 葉の大きなギシギシ、白い花のミゾソバ、ピンクの穂のイヌタデが混生しています。白い大きな穂は、イネ科(禾本科とも言います)のエノコログサ(ネコジャラシ)です。農家の方は全て雑草として刈り払い、放置しますが、みな、しぶとく再生します。
. オオイヌタデ・イヌタデ・ヤナギタデの混生
 ここも路傍の藪。刈り込んだ後に3種のタデ科植物がみずみずしく再生しています。
 雑草として誰も見向きもせず、中にはイヌや誰かがオシッコを掛けているかも知れません。まぁいいや、と細身の葉をちぎって噛んでみると、ちょっと渋辛味があり「あぁ、ヤナギタデだ」なんて確認できるのです。
 
 野草を観察するときは、踏み荒らしたり掘り起こしたりしないよう気をつけましょう。どんな荒地でも藪や崖っぷちでも所有者がいない地はありません。耕作地の畔道に生えている雑草でも、踏み倒されると刈りこむとき難儀するものです。また野菜や果樹などの収穫期にはその場所に近づいて誤解が生じたりしないよう注意しましょう。 
   

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